That's it.

それでおしまい.

占いで0.1歩

そんなものは当たるはずがないと鼻で笑っているにもかかわらず、インターネットや雑誌などのメディアに「占い」という文字が躍ると、無意識のうちにフラフラと引き寄せられてしまいます。

 

特に、新年とか新年度とか上半期終了時点とか「何かしらの変わり目」にはその傾向が強いです。

 

毎回「いや、未来というものは自分自身の努力で切り開くものなのだから、このようなナンパなものに惑わされてはいけないのだ」と戒めてはいるのです。

 

しかし、いざ占いの内容を読み始めると「ま、まさにワタクシが悩んでいたことと、その解決方法が載っているではないか!!」と興奮状態に陥り、コロリといなされるわけです。

 

そして、別に目下の問題は何一つ解決していないにもかかわらず「まぁ、いろいろあるけど頑張ろう」などと妙にスッキリして、明日が明るく見えるのですね。

 

何故このような現象が起こるのでしょうか。それは占いによって「0」が「0.1」になるからだと考えられます。

 

占いに関する知見の一つに、バーナム効果というものがあります。誰にでも当てはまる一般的なことを言われたときに、それをさも自分だけに当てはまるものだと捉えてしまう心理的傾向のことです。

 

恐らく、占いはこのような人間的機微を利用しているのでしょう。

 

誰にでも当てはまることが書かれているのだとすれば、占いは全く無意味に思えます。しかし、本当にそうでしょうか。

 

占いに頼りたくなる時というのは、大体において進むべき方向性が見えていない時です。そういう時だからこそ、誰にでも当てはまることが書かれている占いが役に立つと考えられます。

 

何故かというと、ひとまずの行動指針が定まるからです。先のバーナム効果の説明に従えば、占いにはある程度普遍的なことが書かれていることになります。

 

従って、それに沿って行動したところで致命的な失敗を犯す可能性は少なくなります。

 

どこに進めばいいのか分からない時に、自信をもって今後の行動指針を示すことができる人は多くはいません(そもそもそういう人は暗中模索状態に陥りませんし、多分占いの類も読みません)。

 

どこに進めばいいのかわからない、どう考えればいいのか分からないという状態は「0」です。そして、何事でもそうですが「0」から「1」を作り出すには相当な労力が必要です。

 

ただでさえ厳しいその状況で、そこから即座に自分なりのポリシーを生み出す、つまり「0」を「1」にするのは至難の業なのです。

 

しかし、占いは「1」こそ与えてくれないにしても「0.1」くらいは与えてくれます。誰にでも当てはまることが書かれているので、ひとまず、大外れがない道しるべを示してくれるからです。

 

例えば、占いに書かれている「あなたは外交的な面と同じくらい内向的な面を備えています」というアドバイスは、何の解決策も与えてくれませんが、ひとまず自分を振り返り、今後の振る舞いを決める契機にはなります。

 

とりあえずの道しるべが示されたら、しばらくはそれに沿って歩きつつ、自分の特性に合わせてポリシーを変更していけばいいのです。

 

「外交的か内向的と言われれば、どうやら外交的な面が強いので、もう少し周りと積極的にコミュニケーションを取ってみよう」というように当初のアドバイスをとっかかりにして自分を把握していくわけです。

 

そうすれば、いずれ「0.1」は「0.2」になり「0.3」になり「0.4」になり・・・と積み重ねが増えていき、段々と進む方向が明確に見えてくるはずです。

 

「何が分からないのか、それが分からない」というシチュエーションは理性の袋小路です。そこでさらに理性を働かせたとしても、必ずしも解決にはつながりません。

 

占いを妄信しすぎて壺とか水晶玉とか買わされるレベルになるとさすがに問題がありますが、初めの0.1歩を踏み出すきっかけとしては案外占いも捨てたものではないと思います。